郷土に伝わる日本の発酵食品

日本各地にはその土地の風土や気候に適した発酵食品が現在まで受け継がれています。保存性が高く、栄養面も優れた発酵食品は日本の食文化を支えてきたばかりでなく、長く親しまれ愛されてきました。今回はそんな郷土に今も生き生きと受け継がれている数々の発酵食品の中から、四季のある島国、日本を代表するものを選び出し、その土地に誕生しこれまで残ってきた発酵食品について考えていきます。

いぶりがっこ(秋田県)

秋田県南部に伝わる漬物「いぶりがっこ」は、収穫した大根が凍ってしまうのを防ぐため、暖かい囲炉裏の上に吊るし、ナラやサクラで燻製にした後、麹と塩で漬け込んだたくあんです。燻されるため色は茶色で、風味も味も燻製特有の独特なものです。長い冬、雪の多い秋田県では、この「いぶりがっこ」は貴重な野菜の代わりを果たす保存食として大変親しまれてきましたが、現在は囲炉裏のある家も少なくなり、各家庭の味は失われつつあります。

くさや(東京都・伊豆諸島)

太平洋に浮かぶ伊豆諸島に伝わる「くさや」は、新鮮なムロアジやトビウオ、シイラなどの魚を海水から作られたつけ汁に10時間〜20時間ほど漬け込んだ後、1〜2日間天日で干した発酵食品で独特な強い匂いでも有名です。くさやのつけ汁には抗菌性物質が多量に含まれていて、まだ医療体制が発達していなかった時代、伊豆諸島ではケガや病気の際にくさやのつけ汁を治療薬として用いていたと言われています。食べ方は一般的な干し魚と同じでほとんどの場合焼いて食べますが、加熱すると強烈な臭気が増してしまうため、周囲への配慮が必要とされています。

すんき漬け(長野県)

長野県の木曽地方を中心に伝わる「すんき漬け」は、赤カブの葉と茎を塩を使わずに乳酸発酵された漬物で、厳しい冬の間、野菜の代わりとして食べられてきた保存食でもあります。塩を使用していないすんき漬けは漬物として食されるばかりでなく、味噌汁やそばの具、炒め物、煮物など料理にも大変重宝されてきました。また酸っぱいつけ汁は酢の代用品として使用されることもあります。

かぶら寿司(石川県)

北陸地方の正月料理として欠かせない「かぶら寿司」は、寒ブリとかぶらを米飯と麹で漬けた飯ずしです。寒ブリは2週間〜3週間、かぶらは数日間塩漬けをして、水分をしっかり抜いてから発酵させます。その後1週間〜2週間麹に漬け込みます。かぶら寿司は乳酸菌がとても豊富で、その数はかぶら寿司1gあたりで1億〜10億とも言われるほどです。これはヨーグルトにも匹敵する量で、寒ブリのアミノ酸とかぶらの糖分を栄養源にして増えるとされています。

へしこ(福井県)

「へしこ」とはサバやイワシ、フグの魚を塩漬けにした後、さらにぬか漬けにしたものです。乳酸菌などの発酵によってタンパク質が分解されうまみを出しています。塩漬けにした魚の塩を落とし、米ぬか、塩、赤唐辛子などとともに樽に詰め込んで、長時間(半年〜2年ほど)漬けて、途中で塩漬けでできたつけ汁や魚醤を加えるのが特徴です。へしこにはしっとりと仕上げてあるものと乾燥したものがあります。

ふなずし(滋賀県)

琵琶湖で捕られたニゴロブナで作られるなれ鮨で、大変歴史が古く奈良時代からこの地方に伝わる発酵食品です。塩漬けにしたフナを洗って干した後、ご飯を詰めて自然発酵させていますが、フナの骨が柔らかくなるほど長時間の発酵熟成を行うため、独特の発酵臭と酸味、豊富なうまみが生まれます。ご飯を取り除き、薄切りにしたフナをお茶漬けや汁物、天ぷらにして食べることが一般的ですが、もちろんご飯を詰めたまま食べることもできます。

豆腐よう(沖縄県)

沖縄県に長く伝わる伝統的な発酵食品「豆腐よう』は、沖縄の島豆腐をサイコロ状に切って表面を乾燥させ、塩、泡盛、紅麹を合わせたつけ汁に数ヶ月漬け込み、発酵熟成させた珍味です。麹菌による発酵によってコクが増し、熟成が進めば進むほど味がまろやかになっていくのが特徴です。チーズを思わせる濃厚な味わいの豆腐ようは、主に泡盛とともに楽しまれていますが、パスタやディップのソースとしても気軽に用いられています。ただアルコールが含まれているので、注意が必要な場合があります。

 

時には保存食として、時にはその土地ならではの郷土料理として受け継がれてきた発酵食品は、日本全国に多く残っています。そこには日本人の知恵があり、気候風土にかなった保存方法や味、風味にいかされています。

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