米から造った醸造酒「日本酒」の造り方

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日本酒は、中国酒の流れを汲んだ醸造酒です。それは、日本酒造りには麹菌が使われているからです。しかし、大陸が生んだ中国酒と日本酒には、使われる麹菌や酒造の工程に大きな違いがあります。それは、なぜなのでしょうか。確かに、私たち日本人は、古代から大陸からの影響を受け、発展してきた国です。ただ一つ、他の民族と異なり、日本人がどうどうと誇るべきことがこの酒造りにも明確に表れていると思われます。日本人は、ただそのまま大陸の文化をまね、踏襲するのでは飽き足らず、大陸の文化の上に、日本人らしい独創的な創意工夫を重ね合わせ、とても高度で日本独自の醸造技術を編み出してきたのでしょう。

日本酒とは?他の醸造酒と製法に違いがあるのか?

現在用いられているアルコール飲料の定義は、「アルコール分1度以上の飲料」のことで、酒税法で細かく分類されています。日本酒は、税法上清酒に分類され、米、米麹と水を主原料とするアルコール度数22度未満の醸造酒のことを指します。

醸造酒の製法は大きく分けて3つあります。

1.単発酵

ワインなどの製法に使われます。原料に含まれる糖分に酵母を加えて発酵させる方法です。

2.単行複発酵

ビールなどの製法に使われます。糖分が含まれない原料を糖化してから酵母を加えて発酵させる方法です。

3.並行複発酵

日本酒の製法に使われる最も高度で複雑な醸造法です。

原料の米にはアルコール発酵に必要な糖分が含まれないため、糖化と発酵を同じ容器の中で同時に行う方法です。

そして、この最も煩雑で高度な技術を要する並行複発酵という醸造法を使うのは、日本酒だけなのです。

日本酒ができるまで

1.精米

玄米に含まれるたんぱく質や脂肪、無機質などの成分は、必要以上に清酒の質を劣化させてしまうため、玄米の25~50%程度を精米した白米を使用します。精米作業には、通常6時間以上かけて玄米に近い形に仕上げる「原形精米」と呼ばれる精米法が用いられます。良質なお酒ほど、50%以上に精米されるため、3日間ほどの時間を精米作業に費やしています。

2.洗米・浸漬・水切り

精米された白米は、表面の糠や汚れを取り除くため、「洗米」されます。洗米された白米は、タンクに移し、一定時間水の中で「浸漬」してから排水し、「水切り」します。浸漬時間は、米の種類や使用目的など、諸条件によって異なります。

3.蒸きょう・放冷

水分を含んだ白米を「蒸きょう」します。蒸気で蒸すことで、米のでんぷん組織が破壊され、麹菌が繁殖しやすい状態を作ります。また、酵素が溶けやすく、白米の殺菌にも有効です。

蒸米は、酒の質や以降の工程に大きな影響を与えかねない重要な工程です。粘り気の少ないさらったとした質感で、外硬内軟の蒸米に仕上げます。

蒸米は、麹用、酒母用、掛米用など使用目的別にそれぞれの適温にまで「放冷」します。

4.麹

酒造りで一番重要なものの一つが「麹」です。麹は、黄麹菌を蒸米の表面から中心に繁殖させたもので、様々な酵素の供給源となっています。なかでもでんぷん分解酵素アミラーゼはとても重要な働きをしています。アミラーゼによって、米のでんぷんが分解され、ブドウ糖に変わり、そのブドウ糖と清酒酵母によってアルコール発酵が行われます。

麹は、30℃に冷却された蒸米に麹菌の胞子「もやし」を振りかけた後、麹室にとり込みます。麹室は、温度や湿度が最適な状態に調整されています。

麹菌の繁殖が始まると、麹菌が発する熱によって周囲の温度も上昇するため、切り返しという操作によって、温度コントロールします。

5.酒母

「酒母」とは、アルコールを造る酵母を育てる酛のことです。酒母には、既製の乳酸を添加して作る「速醸系酒母」と、「生酛系酒母」の2種類がありますが、後者は前者と比べ、煩雑で手間がかかる難しい作業です。

生酛系酒母作りは、原料となる水と米、米麹から、伝統的な手作業で1ヶ月かけて作り上げる大変な作業ですが、酒造りの原点ともいえるくらい大変重要な工程です。後継者への伝承の難しさや作業自体の煩雑さなどの理由から、国内では数蔵を除き、ほとんどが前者の酒母に頼っていますが、近年では古くから受け継がれてきた後者の生酛作りが見直されてきています。

生酛系酒母を使用した場合は、自然に乳酸の蓄積が行われ、雑菌が淘汰されてしまうため、多量の清酒酵母が純粋培養できるという利点があります。また、アミノ酸やペプチドを多く含むコクのあるお酒が出来上がります。

6.醪

酒造りの中心となるのが「醪」の工程です。

醪の中では、酵素によって、蒸米のでんぷんがブドウ糖に分解されるほか、アミノ酸やペプチド、有機酸など様々な成分が生成されています。また、清酒酵母の働きによって、アルコール発酵を中心としていろいろな香味成分が醸し出されています。清酒にまるみをつけたり、調和のとれた味を生み出す素になっています。

清酒の醪仕込みは「三段仕込み」と呼ばれる方法によって行われています。雑菌の繁殖を防ぎ、5%前後のアルコール濃度で酵母を繁殖させて、酵母にアルコールに対する耐性を植え付けます。

醪は15℃前後に保たれ、2~3週間程度でアルコールが19%近くになっている熟成醪となり、「上槽」(圧搾)されます。

7.上槽・滓引・濾過・火入れ

熟成醪を圧搾機に入れ、新酒と酒粕に分類し、不溶性のタンパク質やでんぷんの成分は沈殿させ、「滓引き」します。滓を除去した酒をさらに「濾過」した後、約65℃で「火入れ」し、雑菌と残存酵素を破壊し、約半年間タンクの中で熟成すると清酒の完成です。

まとめ

このように、一本の清酒を造るのに、大変長い時間と手間をかけて造られていることがわかりました。日本酒は、神様に捧げられるとても神聖なものです。一口一口感謝の気持ちで味わいたいものです。

最近では、洒落た酒器も数多くあります。その日の気分にあわせて、あるいは、お料理にあわせて、日本酒の味わい方を工夫してみましょう。

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